研究研修・調査報告書(富山市視察)

報告日2015年 7月16日
報告者名渡部 俊明
参加者名須田毅議員、中村昌治議員、寺田弘子議員 小野弘議員、渡部俊明議員、宮崎雄一郎議員
視察先又は研究会等名称富山市役所
視察期間又は開催日2015年7月2日~7月3日
場所富山市役所
時間内容欄に詳細記入
講師下記報告内に記載
内容・所見等富山市役所 7月2日 
13:30 ~ 14:40 視察事項説明
14:40 ~ 15:00 庁舎案内(議場・展望塔)

 研修テーマ
コンパクトシティ戦略による富山型都市経営の構築
*富山市の概況
*公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり
*コンパクトなまちづくりを基本方針とした環境政策の推進
*環境未来都市の概要と取組状況
*富山市のまちづくりに対する国際的な評価
説明者:環境政策課 中村主査
 研修テーマである上記5項目について一括説明

1. 富山型都市経営構築の背景
(1) 富山市の人口増加率は鈍く、高齢化率に関しては全国平均を上回る状況であり、2045年の推計値では40.2%という超高齢化が予想される。
(2) 日本1位の道路整備率を背景に強い戸建て志向が進み、市街地が外延的に拡大した事により人口集中地区の面積が過去35年間で2倍に増加した。(県庁所在都市では全国で最も低密度な都市となっている)
この事により、ごみ収集や除雪にかかる都市管理コストの上昇や中心市街地の衰退が懸念される。
(3) 人口集中地区の拡大により自動車の交通手段分担率が7割を超えるなど過度に自動車依存率が上昇し、一方では公共交通の衰退が著しくなり自動車を自由に使えない人にとっては極めて暮らし難いまちが形成された。
(4) これらの事を鑑み、将来世代に責任が持てる「持続可能な都市経営・まちづくり」が必要となった。

2. 目指す都市像・コンパクトなまちづくり
(1) 鉄軌道をはじめとする公共交通を活性化させ、その沿線に居住・商業・業務・文化等の都市の諸機能を集積させることにより、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを実現。
(2) 富山市が目指す「お団子と串」の都市構造
一定水準以上のサービスレベルの公共交通と、串で結ばれた徒歩圏
(3) 実現するための3本柱
・公共交通の活性化(特に高齢者向けサービスの確立)
・公共交通沿線地区への居住促進(徒歩圏内居住地の確立)
・中心市街地の活性化(研究会による検討)
(4) 公共交通沿線における居住人口の目標
便利な公共交通沿線の人口を増やし、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを実現
10年前:28% ⇒ 現在(H26)32% ⇒ 10年後(H37)42%を目指す

3. コンパクトなまちづくりを基本とした環境政策の推進
(1) 環境モデル都市に選定(H20年7月)
温室効果ガスの大幅削減など高い目標を揚げて先駆的な取り組みにチャレンジする都市として、公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりを核としたCO2削減計画について評価を受けた。
富山市環境モデル都市行動計画
第1期計画:H21年4月~H26年3月
第2期計画:H26年4月~H30年3月
(2) 環境未来都市に選定(H23年12月)
LRTなどの公共交通を軸としてコンパクトシティーを目指す戦略的な提案が、地方都市が抱える問題の解決モデルになると評価された。

(3) SE4ALLエネルギー効率改善都市に選定(H26年9月)
環境未来都市や環境モデル都市として取り組んできた実績や、将来的なエネルギー効率の改善への期待が評価された。

4. 環境未来都市の概要と取組状況
国の新成長戦略(H22年)に位置付けられた「21の国家戦略プロジェクト」の一つとして、また、新たな成長戦略「日本再興戦略」にも位置付けられた。
富山市環境未来都市推進協議会を設立、市長をリーダーとし①環境部会、②高齢化対応部会、③産業振興部会のもと、自由な提案と市長のリーダーシップとスピード感を持った取り組みを実施。
【主な取り組み】
(1) LRTネットワークの形成
(2) 異なる交通モード間の連携強化
(3) 公共交通軸としてのバス交通のサービス水準の充実
(4) セーフ&環境スマートモデル街区の整備
(5) バイオマスを使った自律型エネルギー・資源循環システムの導入
(6) バイオガスネットワークによるエネルギー循環システムの整備
(7) 再生可能エネルギーを活用した農業活性化
(8) 再生エネルギーを活用した富山型農業活性化モデルの国際展開
(9) 薬都とやま薬用植物栽培工場の構築
(10) ヘルシー&交流タウンの形成
(11) 交通空間の利活用交流推進
(12) 高齢者、障害者等に配慮した路面電車施設の整備
(13) 地域コミュニティ主体の交流空間の整備
(14) 6次産業化による環境と健康をテーマとした多様なビジネスの推進
(15) エコフォレストとやま(林地集約化事業)
(16) 呉羽丘陵での「人の自然との共生&再生可能エネルギー」フィールドミュージアム形成
(17) 新たな取り組み(立山山麓地域における地熱資源開発)

5. 富山市のまちづくりに対する国際的な評価
(1) OECDにより先進5都市として取り上げられている
(メルボルン、バンクーバー、パリ、ポートランド、富山市)
(2) 持続可能な都市経営が評価され国際会議への招聘が増加
(3) 国際連合のSE4ALLに、日本で唯一の選定
(4) ロックフェラー財団よりレジリエント・シティーに選定
「所見」
富山市は、日本の人口減少と超高齢化のなかで、20年から30年先を見据えた、将来世代に責任が持てる「持続可能な都市経営・まちづくり」が必要と考えて様々な施策に取り組んでいる。現状に甘んじない危機感を市長だけでなく市全体で共有し、国や世界に発信もしながら、市長の強力なリーダーシップがこれまでの施策の成功につながっている。
 危機感とは、「首都圏をはじめとする大都市部では人口吸引力働くものの、地方都市においては、人口減少が地域経済の縮小を呼び、地域経済の縮小が人口減少を加速させる」という負のスパイラルに陥るリスクが高いというものである。
 さらに、市街地の外延的拡大、過度な自動車依存と公共交通の衰退などの都市特性があり、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを目指すことになった。その3本柱は、①公共交通の活性化 ②公共交通沿線地区への居住促進 ③魅力的でなくてはならない中心市街地の活性化、である。
 これと同時に、コンパクトなまちづくりを基本方針とした環境政策の推進をすすめている。平成20年には「環境モデル都市」に選定された。これは、公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりを核としたCO2削減計画について環境省から評価を受けた。
 平成26年には、「環境未来都市」に選定された。国の目指す地方都市の抱える課題の解決モデルになりうるコンパクトシティという戦略的な提案が国から評価された。世界に類のない成功事例を創出するとともに、その成功事例を国内外に普及展開することを通じて、新産業の創出や地域活性化など、我が国全体の持続可能な経済社会構造を目指すものとされている。ひとことで言えば、環境、社会、経済の三側面に優れた、より高いレベルの持続可能な都市を構想するものである。生活の質と環境が調和した「満足度の高い暮らし」の創生により持続型社会を実現するものである。15をこえる取り組み内容の紹介もあり、本市にもおおいに参考になる。
 国際的な評価も高く、OECD、国連、ロックフェラー財団などから、エネルギー効率改善都市、さまざまなリスクに耐えうる、回復力ある強靭な都市、コンパクトシティ政策報告書などの観点で取り上げられている。
 本市より、自然環境、観光財産、歴史などでは、豊かな富山市ではあるが、共通点も多い。できない理由、違いを挙げるよりも、今後は、都市経営の観点から、国や県とも連携しながら、市長や議会が連携して、民間の力をおおいに喚起し、強いリーダーシップを発揮する必要性を学んだ。







富山市役所 7月3日 
9:45 ~ 11:00 視察事項説明

 研修テーマ
富山型デイサービスについて
*富山型デイサービス DVD(20分)を視聴
*富山型福祉サービスの特徴
*富山型福祉サービスができた経緯
*行政との連携の始まり
*富山型デイサービス推進特区
*富山型デイサービスのメリットとデメリット
説明者:障害福祉課 企画係 植野係長
 研修テーマである上記項目について一括説明

1. 富山型福祉サービスの特徴
(1)小規模
  街中の民家を改修して造った施設であり、地域と密着した「ひとつの家」
として運営している。
(2)共生ケア
 高齢者・身体障害者・知的障害者・心身障害児・乳幼児を同じ施設で同時に
処遇する取組。

2. 富山型福祉サービスができた経緯
平成5年に誕生したサービス。
富山赤十字病院を退職した3人の看護師が開設したデイケアハウスで、赤ち
ゃんからお年寄りまで障害のあるなしに関わらず受け入れたことから始まり、
後に富山型と言われるようになった。

  病院看護師時代では最後の場面でのお年寄りの帰宅希望が多い事や、老人ホ
ームでの無気力なお年寄りの生活を見て違和感を感じデイケアハウスの取り
組みを考えた。子供と一緒に居る事による高齢者の生甲斐や喜び・笑いを提
供する事が何よりのリハビリになると考え取り組んでいる。

当初は、老人福祉法・身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・児童福祉法の
各法により設備/人員の基準が定められていた事から、行政からの支援は得
られなかった。


3. 行政との連携の始まり
平成8年:富山市単独の「富山市在宅障害者デイケア事業」の受託開始
平成9年:高齢者のデイケアサービスへの補助金交付開始
平成12年:介護保険制度開始⇒通所介護事業所として指定
上記の事より、デイサービスの安定した経営が図れる様になった。

4. 富山型デイサービス推進特区(H15年11月に認定)
  地域限定で規制を緩和し、経済の活性化を図る国の構造改革特区に「富山型
デイサービス推進特区」が認定され、介護保険上の指定通所介護事業所など
で、知的障害者・障害児のデイサービス利用が可能となった。
  
5. 富山型デイサービスのメリットとデメリット
 (1)メリット
 ・子どもと触れ合うことで、自分の役割を見つけ、意欲が高まることによる日
常生活の改善や会話の促進という高齢者や障害者への効果
 ・お年寄りや障害者など他人への思いやりや優しさを身につける成育面といっ
た児童への効果
 ・地域住民が持ちかけてくる様々な相談に応じる、地域住民の福祉拠点になる
という地域への効果

 (2)デメリット
 ・高齢者と身体障害者、知的障害者、心身障害児が同時にサービスを受けるの
で、障害特性に応じた処遇が確保されるか不安がある。

6. 障害者自立支援法の施行
  平成18年10月に障害者自立支援法が全面施行され、障害者(児)の高齢者
デイサービスの利用が地域限定の構造改革特区から全国展開された。

【所見】
 惣万氏の熱意から始まった「富山型デイサービス」は、まさに地域の手で地域を守る取り組みであると感じた。
 小規模・共生を特徴とする「富山型デイサービス」は、家族的な雰囲気の中、地域に密着した施設となっており、利用者自身が頑張れる環境づくりが必要とされている。
 高齢者および障害者の受け入れを基本とするが、健常児の受け入れもある程度自由であり、指定施設の隙間を埋める位置付けとして、いつでもだれでも利用できる施設となっている。
 

 
現在は多くの企業も参入してきているが、利益追求型の企業が運営する施設では、トラブルになりがちな部分があるとの事。
 空き家利用の推進や地域の福祉拠点としての「富山型デイサービス」は、本市でも可能な事業として考えられるが、人材の発掘や事業開始へのきっかけづくり、物件の情報提供など、多くの課題・取組みが必要であると考える。
 本市にある、宅幼老所「ボーナビール二本松」での取組みを参考(調査)にしながら相模原市の「地域の福祉拠点創設」を模索したい。
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