自由民主党相模原市議団 行政視察報告
【豊川市】
日時:平成30年1月24日 午後1時半〜3時半 豊川市議会 委員会室
対応:豊川市議会事務局長 田中 邦宏様
視察項目
- 女性向け防災冊子作成事業について
- 通常の防災ハンドブックとは分けて、「女性のための」と限定した冊子を作成した経緯について
- 所管課以外に作成に携わった方の存在の有無について
- 冊子作成にあたって工夫した点及び気をつけた点について
- 冊子作成の経費について
- 市民からの反応及び意見について
説明
企画部防災対策課 防災対策監 飛田 哲孝 様
企画部防災対策課 課長 土居 秀三 様
企画部防災対策課 主事 原田 理沙 様
提供資料
- 女性の力を活かした防災対策(女性のための防災ハンドブックの作成)
PP資料
2.女性のための防災ハンドブック(平成29年11月発行)
3.女性目線の避難所運営を考えよう!(豊川市広報 特集)
4.豊川市避難所運営マニュアル(平成28年4月改訂)
5.豊川市避難所運営マニュアル【本編】(平成29年4月改訂)
6.豊川市避難所運営マニュアル【資料編】(平成29年4月改訂)
7.豊川市避難所運営マニュアル【様式集】(平成29年4月改訂)
8.コミュニケーション支援ガイド
内容:提供資料に基づいて所管課担当者から説明があった。
【防災対策への女性目線の大切さ】
・東日本大震災への職員派遣により女性目線による防災対策の必要性を認識。
・市では派遣の教訓から避難所への授乳室の配置等を行ってきたが、幅広い課題への具体化が難しかった。
・2年前に女性職員の配置により具体化が進んだ。配置された女性職員は、子ども課や保険センターを経験。
【ハンドブック作成の経緯について】原田主事(女性職員)
・「女性目線で考える避難所運営検討会」(平成28年6月開催)に参加と名古屋大学減災館での研修「男女平等の視点から考える避難所生活について」(平成28年6月開催)に参加した事と、市広報9月号に特集掲載されたことによる反響が大きな要因となった。
・「女性目線で考える避難所運営検討会」には、子育て団体、防災ボランティアコーディネーター、男女共同参画団体、市職員(被災地派遣経験のある保健師)が参加。具体的な意見が挙がった。
*使い捨てほ乳瓶の選定、マタニティーマーク(ステッカー、キーホルダー)の避難所備蓄、女性用品の配布を女性が行うこと、DV等の危険性を事前に告知、女性防災リーダーの育成講座、避難所運営マニュアルの改訂等
・検討会、研修会の参加により、女性自身が防災についての知識を身につける必要があること、女性の意見をくみ取り、地域防災の中心を担う女性の防災リーダーの必要性が分かった。
【ハンドブック編集のポイント】
・災害が起きた時の行動(P7)
・女性の視点からまとめた非常持ち出し品リスト(P5〜6)
・女性にとっての避難所での問題(P12)
・豊川市独自の情報(とよかわ安心メール)(P8)
・暴力相談窓口(P14)
・サイズをハンディなA5判とした。
・冊子が厚くならないよう16ページでまとめた。
・見やすく手に取ってもらえるように、書体を工夫した。
・制作数量は2000部で、単価は53円、市出先機関に配架すると共にとよかわ女性防災リーダー養成講座等で配布。
・市ホームページからダウンロードが可能。
・他市事例(足立区など)を参考に原案を市防災対策課で作成した後に検討会にかけた。
【編集協力者】
・豊川市防災ボランティアコーディネーターの会代表
・特定非営利活動法人とよかわ子育てネット代表
・豊川共生ネットみらい
・穂の国まちづくりネットワーク代表
・豊川市職員(東日本大震災派遣職員、歯科衛生士、保健師、男女共同参画担当)
・名古屋大学減災連携研究センター
・東日本大震災経験女性(5名)
・熊本地震経験女性(3名)
【コミュニケーション支援ボード】
・避難所等で配慮が必要な方をサポートするために作成。
・市ホームページからダウンロードが可能。
【今後の展開】
・女性のための防災ハンドブックを活用した講座開催等の防災啓発の促進
・とよかわ女性防災リーダー養成講座の内容を充実させ、女性の防災リーダーの割合を増やす。目標7%、40人づつ増やしたい。
・点字版のコミュニケーションボードの作成等で配慮の必要な方へのサポートの充実。
主な質疑
Q.女性防災リーダー養成講座の内容は?
A.2日間の講座を開催、修了証を発行。スキル維持のためにフォローアップ講座を準備。フォローアップ講座は既存の防災フォローアップ講座を活用。
Q.ハンドブック作成の成果の実感は?
A.報道後の反響から実感している。
Q.女性目線の防災対策を進めるための女性職員の配置について?
A.東日本大震災への職員派遣の経験から、女性目線の防災対策の必要性を課題としていた防災対策課長の強い思いがあった。
Q.避難所運営に消防団を活かすことについて?
A.消防団の役割範囲から住み分けがうまくいっていない。
Q.ハンドブックが対象としている女性像は?
A.20代から50代の子育て世代から高齢世代前の年齢層を想定している。
Q.制作部数2000部の根拠は?
A.1年間の出生数が1800人ということで2000部作成した。昨年11月作成して現在1200部を配付していることから、増刷を検討している。
Q.配布方法は?
A.市支所に各50部配布。配布希望の問い合わせもある。他に講習会等で活用。
Q.相模原市で作成する場合のアドバイスは?
A.他自治体で作成したものを研究すること。豊川市では東京都足立区のハンドブックを主に参考とした。
- 女性防災リーダー養成の対象は?
A.自主防災会から21人、健康づくり推進員から17名、とよかわ子育てネットから12人の計40人が応募。
Q.活躍の場は?
A.各所属団体内での活動を想定している。 他
所感:相模原市議会においても防災対策における女性の視点について議論がされていると共に、市にも課題意識がある。豊川市で作成した女性の視点での防災ハンドブックは、既存の防災がイドでは取り上げていない女性特有の課題を網羅している点が評価される。また、ハンドブック作成に留まることなく、女性の防災リーダー育成やコミュニケーション施策迄展開している点が大いに参考になった。相模原市の施策に活かしたい。
【名古屋市】
日時:平成30年1月25日 午前9時半〜11時半 名古屋市会 議会運営委員会室
対応:名古屋市会事務局 総務課 古橋 様
視察項目
- リニア中央新幹線改行を見据えた名古屋駅周辺のまちづくりの推進事業について
- 南海トラフ巨大地震の被害想定を踏まえた名古屋市震災対策実施計画の策定事業について
説明
住宅都市局リニア関連都心開発部 主幹 高山 直明 様
防災危機管理局 危機管理企画室 主査 深川 和哉 様
提供資料
1.リニア中央新幹線の改行を見据えた名古屋駅周辺のまちづくり PP資料
2.名古屋駅周辺まちづくり構想(平成26年9月発行)
3.南海トラフ巨大地震の被害想定と名古屋市震災対策実施計画 PP資料
4.名古屋市震災対策実施計画(平成28年10月改訂)
5.名古屋市震災対策実施計画 平成28年度の実施状況(平成29年10月発行)
内容:提供資料に基づいて所管課担当者から説明があった。
【リニア中央新幹線改行を見据えた名古屋駅周辺のまちづくりの推進事業について】
①リニア開業による大交流圏域の誕生
・2027年開業予定のリニア開業により、時間距離の短縮による交流圏の変化が生じる。
②リニア中央新幹線と名古屋駅
- 名古屋駅へのリニア新駅の配置と用地取得の範囲および用地取得事務にかかる基本スキームの計画。
③名古屋駅周辺まちづくり計画
- 交通基盤関連プロジェクト:スーパーターミナルナゴヤをめざす交通軸の整理…既存乗り入れ路線の入口がバラバラで導線が迷路となっているものをターミナルスクエアの配置で分かりやすい駅に改修。併せて、ユニバーサルデザインに基づく空間形成。
- まちづくり関連プロジェクト:地下駅となるリニア駅の工事手法を開削工事とすることから駅上にできる広大な空間の利用をまちづくりの視点で地区間連携等の手法を用いて行う。(名古屋駅周辺部←→栄地区)
- 防災性の向上:大規模地震発生時の帰宅困難者対策、浸水対策、高い防災性能を備えた建築物の整備促進。
主な質疑
Q.まちづくり計画のスケジュールは?
A.2027年のリニア開業迄に駅前広場、乗換え施設の整備と共に名鉄駅の拡大も計画している。
Q.まちづくりの手法は?
A.土地再生地域の指定による制度を活用。公共性をインセンティブの基本としている。
Q.事業費は?
A.私有地がほとんどなく、JRと私鉄事業者が用地を所有している。このため、市はまちづくりの構想を担当していることから事業者との調整をしている。
事業費ははっきりと確認できていない。
Q.まちの中心となる広場(JRの用地)の活用への公共性確保は?
A.地元の意見を聞きはじめている。地元からは、防災機能の充実、駐車場や駐輪場の要望が出ている。
Q.まちづくりのポイントとされている名古屋らしさとは?
A.名古屋城等のシンボルはあるが、交通システム(基幹バス)やビニモ等の新しい交通システムも名古屋らしさと強調したい。
Q.駅前の広場化でモニュメント(飛翔)はどうなるのか?
A.移設ができるか検討している。 他
所感:相模原市においてもリニア神奈川県駅開設に向けて橋本で試掘が始まっている。複数の路線乗り入れの駅の改修と連携したまちづくりは地域の今後に大きく影響する。名古屋市の名古屋駅周辺まちづくり構想は、大規模なもので駅の様相が大きく変わるものである。迷路と揶揄されている名古屋駅が利用しやすいターミナルとなる予感を感じた。神奈川県駅の周辺に及ぼす影響と今後の相模原市の発展に必要となるまちづくり構想を注視したい。
【南海トラフ巨大地震の被害想定を踏まえた名古屋市震災対策実施計画の策定事業について】
- 名古屋市の特徴
- 地形:中央部以東の良好な地盤に対して、北・西南部に拡がる地域は軟弱地盤に加えて海抜0メートル地帯を含む。
- 人口:常時人口230万人、昼間人口259万人
- 港湾:臨海部に工業、供給、運輸等の工業的土地利用が多く、名古屋港は日本一の取扱い貨物量となっている。
- 南海トラフ巨大地震について
- 南海トラフでマグニチュード8〜9クラスの地震が30年以内に約70%の確率で発生すると言われている。
- 名古屋市での想定:過去の地震を考慮した最大震度(6強)、あらゆる可能性を考慮した最大震度(7)
- 市内震度分布図、液状化可能性分布図、最高津波推移と津波到達時間予想図、浸水範囲および浸水深図、浸水開始時間予想図の解説。
- 名古屋市地域強靱化計画策定の経緯と概要について
- 策定経緯:平成25年の国土強靱化法の施行伴い、平成26年に愛知県と名古屋市が国土強靱化地域計画策定モデル調査実施団体に選定された。同年から計画検討会議を重ね、平成27年10月に「名古屋地域強靱化計画(地震災害)」策定
- 計画の構成:ポイントは第3章で、名古屋市強靱化の現状と課題(脆弱性評価)「事前に備えるべき目標」と「起きてはならない最悪の事態(リスクシナリオ)」、強靱化に関する「施策分野」を設定し、現状について分析・評価を実施
- 基本目標:強靱化基本目標に愛知県との協議で、他団体や他地域との連携強化、中部権の中心都市として強靱化に貢献することを加えた。
- 名古屋市震災対策実施計画:平成26年の「南海トラフ巨大地震の被害想定」の公表から推進に向けた5年計画の策定、平成28年10月に脆弱性評価の観点から事業拡充に向けた計画改訂を実施。
- 災害対応力の向上:災害救助用物資の備蓄充実、非常用電源設備の機能強化、避難所の機能確保策の検討
- 災害に強いまちづくり:橋りょう・河川堤防の耐震対策等、海抜表示の推進、建築物における天井脱落防止対策の推進。
- 地域防災力の向上:避難所開設・運営訓練の充実、事業継続計画の策定支援事業
- 防災啓発媒体の更新:ハザードマップやアプリの更新
- 評価検証:平成28年度実施状況について評価基準に基づいて実施状況を評価。順調(177事業)、やや遅れ(14事業)
所感:名古屋市の震災対策の推進には、平成25年の国土強靱化法の施行、平成26年に愛知県と名古屋市が国土強靱化地域計画策定モデル調査実施団体に選定、平成27年10月の「名古屋地域強靱化計画(地震災害)」策定が寄与していると感じた。被害想定に過去地震例を考慮した最大数値と、あらゆる可能性を考慮した最大値を想定し、ハード対策には過去最大値を、津波避難対策等にはあらゆる可能性を考慮した最大値を基に対策を規定している。昨今の災害発生には想定外と言い訳ともとれるケースもある中、市民の命に関わる対策事業には、想定外を想定しないで想定内に射程をおいた対策が必要と感じた。