研究研修・調査報告書(調布駅・豊島区視察)

報告日2015年9月1日
報告者名渡部 俊明
参加者名久保田義則 議員、山岸一雄 議員、中村昌治 議員 小野沢耕一 議員、小野 弘 議員、 渡部俊明 議員 宮崎雄一郎 議員
視察先又は研究会等名称調布駅・豊島区役所
視察期間又は開催日2015年7月24日
場所京王調布駅・豊島区役所
時間内容欄に詳細記入
講師下記報告内に記載
内容・所見等京王調布駅 7月24日 
11:00 ~ 12:00 視察事業説明

 研修テーマ
京王調布駅付近の連続立体交差事業
*調布駅付近連続立体交差事業
*調布駅付近現場説明
説明者:
 研修テーマである上記項目について一括説明

1. 調布駅付近連続立体交差事業の背景
・踏切待ちによる車両の渋滞が恒常的に発生
・緊急車両(救急車・消防車等)の通行に支障が出る
・バス路線の運行時間が不透明
・鉄道線路により街が分断化されている
上記事由の解消に向け計画がなされた。


2. 調布駅付近連続立体交差事業の計画
   ・高架化と地下化の検討
    当初は高架化を検討していたが、高架化の為の用地買収の問題・住民の地下化志向・地下化後の地上部分の有効利用、昭和44年都市計画設定にて線路脇用地が確保されており地下化を行う為の用地が確保出来る事などから、地下化とする事で決定。
    *高架化と地下化の利点と欠点
     高架化 利点:工事費は地下化に比べ安価となる。
         欠点:高架を建てる用地が線路横に必要となる。
            高架化後の高架下の土地利用の問題。
     地下化 利点:線路下の工事となる為、用地買収の範囲が少ない
            地下化後の地上部分の有効利用が出来る
         欠点:新設地下路線との接続に日数を要する。
   ・計画段階で、地元住民および地元消防署員へのアンケートを実施。
   ・連続立体交差事業と上部利用(駅前広場)の二本立てで計画。

  【事業の経緯】
   平成10年 建設省(現国土交通省)事業採択
   平成14年 都市計画決定
   平成16年 工事着手
   平成24年 地下化開業
   平成26年 既存鉄道の撤去により地下化工事完了
         駅前広場整備工事着手
   平成32年 駅前広場整備完成(予定)

3. 調布駅付近連続立体交差事業の実施内容と効果
(1)18箇所の踏切除去による自動車交通の円滑化
    ・踏切遮断時間:1日平均11.0時間が ⇒ ゼロに
    ・踏切による交通渋滞:最大290mが ⇒ ゼロに
    ・バスダイヤの信頼性の向上:踏切使用路線で26分 ⇒ 21分に短縮
    (2) 京王線と相模原線の平面交差の解消
    ・地下二層化により柔軟なダイヤ設定が可能に
    ・相模原線直通の特急を新設
    (3) ホームドア設置による安全性の向上
    ・ホーム幅員の拡幅によるホーム上の安全性向上
    (4) バリアフリー設備の充実による駅利便性の向上
    ・エレベーター・エスカレーターをはじめとするバリアフリー設備充


    (5) 連続立体交差事業実施後のアンケート結果
    地元住民
    ・線路の反対側へ行きやすくなった       9割
    ・緊急車両がすぐに到着してもらえる安心感   8割
    消防署員
    ・踏切遮断で通行を妨げられた経験       8割
    ・緊急出動時の移動がスムーズになった     10割

「所見」
鉄道線路による街の分断は、地域住民の不便性を生むのみで無く、救急車や消防車など緊急車両のスムーズな通行に支障を来たす場合があり、立体交差の重要性について改めて感じた視察であった。
本市も横浜線・相模線・小田急線などによる踏切箇所は数多くあり、普段からの緊急車両の通行状況について検証する必要がある。
京王調布駅付近の連続立体交差事業は地下化で進められ、地上部分の駅前広場検討など有効活用の検討がなされている。
本市も横浜線の連続立体交差に関する調査・検討がなされており、今後の動向については、今回の調布駅付近連続立体交差事業を参考に、本市なりの在り方について検討したい。








豊島区役所 7月24日 
14:30 ~ 16:30 視察事業説明

 研修テーマ
豊島区新庁舎整備
*新庁舎整備事業説明
*新庁舎見学
説明者:
 研修テーマである上記項目について一括説明

1. 新庁舎整備事業の背景
・防災拠点としての不安
・著しい老朽化
  東日本大震災後、庁舎接合部にズレが発生し防災拠点としての機能に不安がある。
・混雑する窓口
・狭あいで不便
  区民課・国民健康保険課など、人の行き来が困難となる混雑が発生
・分散する窓口
  本庁舎以下、別館・保健所・区民センターなど区内7か所に窓口が分散し、住民にとって使い難い窓口体系となっている。

 昭和36年に建設された本庁舎であり、昭和63年に建替計画が持ち上がり基金積み立てを行ったが、バブル崩壊と共に計画は凍結された。
しかし、その後の上記事由により再び新庁舎の計画が持ち上がり、平成20年に新庁舎整備方針が策定された。

2. 南池袋二丁目地区開発事業の流れ
・平成16年に、小学校跡地・児童館・近接住宅エリアの再開発の動きが
生まれ、地元住民等による南池袋二丁目地区開発事業協議会が設立。
・平成18年には、南池袋二丁目地区市街地再開発準備組合が設立、豊島
区が準備組合に加入した。

3. 新庁舎整備事業の流れ
・過重な財政負担を招かずに整備する方策の策定(豊島区)
・小学校跡地を活用した公共施設の再構築を策定(豊島区)
・南池袋二丁目地区市街地再開発事業の構築が、豊島区の再構築とマッチ
ング

   ・新庁舎建設候補地を、小学校跡地を含む南池袋二丁目地区とし、新庁舎
    と市街地再開発事業を一体整備する事となる。

4. 再開発事業スキーム概念
・南池袋二丁目地区の内、小学校跡地・児童館の土地/建物の資産を活用し、
再開発建物の85億円分の床に無償で返還(権利床:10,740.85m2)
・移転後の本庁舎跡地に工事期間を含む76年6か月の定期借地権を設定
し、全借地期間の地代一括前払いと賑わい拠点・文化拠点の創出を要件
にプロポーザル方式で事業者を募集し、191億円の前払い地代を確保。
   ・前払い地代の内、135.9億円を新庁舎整備費(オプション使用等を含む)に充
    当。(保留床:14,832.61m2)
   ・権利床:10,740.85m2 +保留床:14,832.61m2 = 25,573.46m2の
    新庁舎床を確保した。(1階の一部および、3~9階の床を確保)
   ・南池袋二丁目地区住民には、11~49階の住宅部分の内、110戸を
    権利者権利返還分として配分。残り322戸を分譲。

5. 新庁舎の概要と特徴
1階:エントランス・区民交流ゾーン
3~4階:窓口サービスゾーン
  5階:災害対策ゾーン
6~7階:事務室ゾーン
8~9階:区議会ゾーン
 10階:庭園「豊島の森」

   ・ワンフロアを広く確保し申請や届出の窓口を集約。サービスの向上
   ・ITCシステムを導入し総合窓口化を実現。1か所での手続きが可能
   ・高齢者・障害者・子育て・区民相談等の福祉総合フロアを4階に。
   ・3~4階にて年末年始を除く「345日窓口サービス」を開始。
   ・区内51か所に防災カメラを設置。世界初の群集行動解析システムを
    導入し総合防災システムとして活用。
   ・建物外壁に太陽光パネルや緑化パネルを設置。照明のLED化により
    40%以上の温室効果ガス排出量削減を図った。
   ・屋上10階に、かつての豊島区の自然を再現した「豊島の森」を整備
    4階、6階、8階の「グリーンテラス」と外階段でつなぎ、自然環境を体感でき
    る見学・学習ルートを設置。
   ・9階に廊下壁面を活用した回廊美術館「庁舎まるごとミュージアム」を
    設置。


「所見」
豊島区の南池袋二丁目地区開発事業と併せた新庁舎整備事業は、他に類を見ない事業であり、双方の整備事業がまさにマッチングした事による効果と捉える。
本庁舎移転後の土地を定期借地権設定により全借地期間の一括前払いで金額を確保した事、小学校跡地・児童館資産を市街地再開発事業に併せ新庁舎の権利床に変換したアイデアは、本市においても今後の施策の参考になるものである。
 いづれにしても、財政負担ゼロでの新庁舎建設は素晴らしいアイデアの結集といえる。
 新庁舎の機能については良く精査されており、市民重視の窓口サービスゾーンや災害対策ゾーンのワンフロア集中化、市民の憩いや小中学生の環境教育にもなる「豊島の森」「グリーンテラス」は、本市の今後の市役所機能の在り方について検討するにあたり有用な参考事例と成り得るものである。
 新庁舎機能に限らず、本庁舎跡地の定期借地権設定による賑わい拠点・文化拠点の創出などを含め、本市の広域交流拠点事業推進の参考にしていきたい。
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